高校野球の夏の甲子園103回大会は、和歌山県代表の智辯和歌山が初優勝を飾りました。

智辯和歌山高校は、初戦の相手(宮崎商)が、コロナ感染の為に、予想外の不戦勝。

決勝戦を含めても、僅か4試合での過去に無い試合数での優勝校と、なりました。



智辯和歌山は少数精鋭部隊

智辯和歌山高校は、春の選抜大会には出られませんでした。

好投手の小園君を擁する市立和歌山に県大会で敗退。今年のドラフト1位候補である小園君を打ち崩すのは、夏の大会も難しいと言われながらも、見事に県大会決勝戦で小園君を打ち崩しての甲子園出場でした。

 

智辯和歌山高校は全国的な強豪校になりましたが、部員を全国から集めているわけではありません。地元、和歌山県の選手を中心に、近隣県の選手を集めての甲子園出場ですから地元からの応援も大きいものがあります

 

智辯和歌山が、近年、急激に力を付けてきたのは、部員の少数精鋭化に有ると言われています。事実、今年の智辯和歌山の野球部員は1年生から3年生まで、全てで39人と言う少なさでした。

 

智辯和歌山は、創部当時は、全国から多数の部員を集めていましたが、大人数での弊害を考えて、少数精鋭に切り替えてから全国でも頭角を現すようになりました。

 

今年の103回大会の甲子園出場校の部員数を見ると、100人超の高校、または100人近い高校が多いのが現状です。

 

野球部員が100人規模に、なると当然、指導者の目も行き届きませんし、球児も充分な指導を受けることも出来ません。

 

また、ケガの防止の観点から見ても、智辯和歌山の少数精鋭部隊は理想的な部員数だとも言えます。



智辯和歌山は監督交代が絶妙のタイミング

智辯和歌山を率いるのは、現在は中谷監督です。

智辯和歌山の前任の監督は高嶋監督でした。高嶋前監督は1980年から2018年まで智辯和歌山高校の野球部監督を歴任しています。

 

ちなみに、高嶋前監督は智辯和歌山の前には、今回、決勝戦の相手だった奈良県の智辯学園の監督を歴任していて、指導していた高校同士が甲子園の決勝戦を戦う、前代未聞の記録に残る名監督です。

 

しかしながら、名将と言われる高嶋前監督にも苦しい時期は有りました。

 

2000年代に入ると、甲子園まで智辯和歌山は出てくるものの、初戦敗退や想わぬ新鋭高校に負けることも増えてきます。

 

智辯和歌山は歴史の浅い高校ですから、OBのチカラは、それほど強いものでは有りません。

 

しかしながら、奈良の智辯学園から和歌山の智辯和歌山に赴任したのは、当然のごとく全国優勝を果たす使命を義務付けられた赴任とも言われていました。

 

それだけに、甲子園には出てくるものの、甲子園では思うように勝ちきれない智辯和歌山の高嶋前監督に非難の声が次第に大きくなっていったのも事実です。

 

この傾向は高嶋前監督だけではなく、全国の強豪校とも言われる名将も同じ非難を浴びています。有名なのが神奈川県の横浜高校・渡辺前監督と石川県・星稜高校の山下前監督です。

 

横浜高校も星稜高校も、甲子園には出てくるものの、序盤での敗退が目立ち、かつての強豪の名前が消えつつありました。

 

しかしながら、優勝した智辯和歌山も含めて、横浜・星稜も絶妙のタイミングで監督を交代します。

 

名門高校野球部の監督は、何十年も変わることなく指導を続けることが多いです。これは、メリットも有りますが、逆のデメリットも出てきます。

 

やはり、高校野球も時代と共に変化しますし、なによりも大きいのは野球部員の人間性が、以前とは大きく変化したことに有ります。

 

以前の高校球児は、何度も監督から「叱られる」ことで「負けん気」を養い成長する野球部員が多かったです。

 

しかしながら、現在の野球部員(他の高校生も含めて)は、怒られることに全く慣れていません。それ故に、古い監督の「怒りながら育てる方針」が今の高校球児には全く通用しないのです。

 

そこに、加えて監督が「根性論」を用いても今の、理論的な高校球児は付いていきません。このような流れから長きに亘り、名門校を率いた名将が、次の監督にバトンタッチしていくことは近年、顕著に見られます。

 

智辯和歌山は名将・高嶋前監督から2018年夏の大会後に、中谷監督が就任しています。中谷監督は智辯和歌山高校の主将を務めたOBで、プロ野球引退後は、高嶋前監督の下でコーチを歴任しています。

 

実績は充分ながらも、監督に就任して僅か3年目の夏の全国制覇は偉業としか言いようが有りません。



智辯和歌山・中谷野球の完成か

智辯和歌山の中谷監督は、智辯和歌山時代に、強肩強打の捕手として有名でドラフト1位で阪神に入団しています。

プロ入りしてからは、目の不慮の事故もあり目立った実績は残せていません。

 

しかしながら、野球への取り組みや、人間性から故・星野監督や野村監督からも「アイツは立派な指導者になる」と、言われていた中谷監督。

 

今年の夏の活躍を見ていると、星野監督・野村監督の目に狂いは無かったことになります。

 

高嶋前監督時代の智辯和歌山高校の野球スタイルは、とにかく打ちまくる強打のチームカラーでした。

 

その代わり、投手力は弱く、打っても打っても、投手が点を取られて壮絶な展開の末に敗退するケースが多かった智辯和歌山高校です。

 

しかしながら、中谷監督に交代した2018年以降は複数の好投手の継投策を完全に確立して、投手力も優れた野球に転換しています。

 

元々、打力はある智辯和歌山ですから、そこに投手力が付けば強くなるのは当然のこと。

 

今年の夏も、和歌山県大会・甲子園大会を通じて、完全に投手分業制を確立していました。

 

智辯和歌山の投手の継投は

先発⇒中継ぎ⇒抑え

…とのパターンとは異なります。

 

智辯和歌山の継投策は、今日の試合はエースが登板して完投する。次の試合は、別の投手が完投する。その次の試合は、また別の投手が完投する。

 

この投手起用は、中谷監督がプロ野球経験者だからこそ、確立できた投手起用スタイルだと想われます。

 

高校生が、今日は投げるけど、次は投げずに、その次の試合の準備をする…。

 

これは今までの長い、高校野球の歴史の中でも、完全に確立出来た高校は有りませんでした。

 

しかしながら今大会の智辯和歌山は試合数こそ、少なかったものの、見事にプロのシステムを取り入れた投手起用を確立。

 

また、複数居る、投手も見事に自分の投げる日に、照準を合わせてきて万全の投球でした。



智辯和歌山・黄金時代幕開けか

智辯和歌山高校は、今年に入り元メジャーリーガーのイチロー選手が臨時コーチに赴いたことでも話題を呼びました。

 

イチロー選手がコーチしたのは僅かに3日間だけでしたが、今大会でもイチロー選手から吸収した見事な走塁を随所に見せました。

 

智辯和歌山の中谷監督は未だ年齢は42歳です。

 

元プロ野球選手の中でも、高校野球指導者は増えてきてますが、今の段階では一番成功している元プロの指導者と言えます。

 

智辯和歌山高校は、今後も多くの部員を取ることは、しない方針で今まで通りの少数精鋭で試合していきます。

 

1学年にすると、僅かに12~13人前後の部員数ですから、中谷監督も目が隅々まで行き亘るのは事実でしょう。

 

また、甲子園大会で全国制覇する為には、野球部寮の完備が必須とも言われています。

 

智辯和歌山高校は進学実績も高く、名門大学への合格者も多数輩出している和歌山では、名門の高校。

 

中谷監督は、現在42歳ですから、余程のことが無い限り今後20年間は智辯和歌山の監督を続けると想われます

 

智辯和歌山の前監督である、高嶋監督の甲子園での記録は68勝35敗です。

 

中谷現監督が今後、20年間、智辯和歌山の監督を続けるならば、師匠である高嶋前監督の記録を更新する可能性は充分にあります。

 

平成に入り、全国的には大阪桐蔭が一気に全国のトップになった印象が有りますが、今回の甲子園大会の試合を見る限りでは大阪桐蔭に全く引けをとらないチーム力です。

 

全国制覇したことで、秋からの新チームの稼働は全国で一番遅い稼働になります。

 

しかしながら、中谷監督の下で激しいレギュラー争いは続きます。新チームも有力な選手は、たくさん居ます。

 

寮生活で培ったチームワークと、中谷監督の指導力で、新チームも全国制覇が狙える戦力であることは間違いありません。

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