今年の選抜大会から導入された

1投手は1週間以内で500球

…の球数制限ですが、幸い今年の夏の甲子園は球数制限に泣かされる投手・高校は有りませんでした。

 

球数制限は高野連が、積極的にリードして導入した訳ではなく、実は新潟県の高野連が昨年から、新潟県独自で球数制限の導入を決めて後追いで、高野連が追随して認めたことは余り知られていません。



球数制限に一石を投じたのは新潟県の高野連

新潟県は、2020年から球数制限の導入を県独自で決定して、新潟県大会で実施しています。

 

新潟県は、日本文理高校が全国準優勝と言う実績は有るものの、全国的に見ると決して「野球強豪県」では、ありません。

 

では、なぜ野球強豪県でも無い新潟県から球数制限が議論されて、実施されたのか?

 

そこには、新潟県高野連と医師会との強い連携が有りました。

新潟県医師会が、県内の高校球児の肩・肘の状態を全てチェック。

 

すると、明らかに投手の投げすぎが原因の肩・肘の故障が露呈してきたのです。

 

また、今、現在は大丈夫でも、将来的に肩・肘を壊す可能性が有る投手・選手も沢山、見受けられました。

 

この経緯により、新潟県では県独自に「球数制限の導入」を決定して、甲子園には直結しない春の大会から試験的に導入したのです。

 

ただし、高野連には事後報告でしたから、当然、プライドの高い高野連は猛反対。

 

それでも、新潟県は独自の球数制限導入を曲げずに、春の大会を実施しています。

 

球数制限が導入された背景には、新潟県の高野連が大きく関わっていたことが判明しています。



近江高校・山田君「球数制限」の可能性

智辯和歌山高校の優勝で幕を閉じた今年の103回、夏の甲子園大会。

その中でも「球数制限」に唯一、引っかかる可能性が有ったのが近江高校の先発・山田君です。

 

近江高校は、初戦の日大東北戦が試合途中で降雨ノーゲーム。

 

他の日も長雨の影響で、強行スケジュールの中で投げざるを得ない状況に、なりました。

 

近江高校は

先発:山田君⇒抑え:岩佐君

…と言う継投策は確立されています。

 

山田君が完投することは基本的には、なくて先発の山田君が6回まで100球程度を投げ、後は岩佐君に任す継投策です。

 

継投策が確立されてますから、試合スケジュールに余裕が有れば、山田君に球数制限が及ぶ可能性は、本来は有りませんでした。

 

しかしながら、今大会は異例の長雨の影響と、甲子園球場を借りている期間の条件の為に、初戦を遅く迎えた近江高校だけが過酷な日程で戦わざるを得なくなりました。




球数制限の問題点が浮き彫りに

今年の高校野球103回大会は、長雨の影響で順延を重ねたことが理由ですから、誰にも責任は有りません。

 

しかしながら、このような異例なケースでは、試合日程によって明らかに「不公平感」が浮き彫りになります

 

その典型が、今大会では滋賀県代表の近江高校・山田投手だったのです。

 

山田君は、初戦の日大東北戦で先発し終始リードしながらも、降雨ノーゲーム。

 

球数制限の問題点の一つは、ノーゲームの球数もカウントされてしまう事です。

 

この試合でも、100球近くの球数を投げていた近江高校の山田君。

 

その後、日大東北の再試合には勝利したものの、大阪桐蔭、盛岡大付属、神戸国際大付属と、あまりにも過酷な中での投球が続きました。

 

一方では、試合間隔が空いて、充分に休養出来た高校も沢山ありましたから、余計に近江高校の山田君に同情と将来性抜群な素材だけに心配の声が挙がりました。

 

おそらく、高野連も、ここまでの長雨は予想していなかったことでしょう。

 

しかしながら、今大会で露呈したのは球数制限だけでは、ありません

 

  • コロナで長引く選手の宿泊
  • それに伴う経費の増幅
  • 甲子園球場との契約の見直し

 

依然として、コロナの収束が見えない中で、来年の選抜大会を、どのように実施していくのか。

 

高野連の方針が非常に注目を集めます。



球数制限で厳しくなる公立高校

新潟県で始まった球数制限は、結果として全国大会でも準用される事に、なりました。

 

高校野球、特に甲子園で投げすぎて、その後の可能性を潰してしまった選手は数えきれない位に、過去には存在します。

 

また、そのことを「悲運のエース」として持ち上げるマスコミの存在も有りました。

 

しかしながら、悪しき習慣を変える意味では、高野連が球数制限の導入に踏み切ったのは英断だと言えます。

 

逆に言うと、全国の公立高校野球部が甲子園大会に出場するハードルは、球数制限によって、一段と高くなるのは事実です。

 

平成時代の高校野球では、投手複数制の重要性が謳われて、実際に甲子園まで出場してくる高校は、投手を最低でも2人以上、揃えないと甲子園まで辿り着けなくなりました。

 

ところが…。

 

今大会を見る限りでは、投手が2人では足りない時代に入りました。

 

現実に、県大会からエースだけが、全イニングを投げきり、甲子園出場した高校も有りましたが、全て初戦で敗退しています。

 

また、2人の投手が居ても、試合日程によっては、余裕がないことも判明しました。

 

近江高校は、準決勝の智辯和歌山戦で、山田君が明らかに疲労の色が見え始めた終盤に、いつもは継投する岩佐君の姿はマウンドには有りませんでした。

 

実は、岩佐君は、準々決勝での神戸国際大付属との試合で、右肘を痛めていました。

 

名将・多賀監督は将来性のある岩佐君を起用することはせずに、2年生の左腕投手を2人、つぎ込みました。

 

近江高校の場合は、まだベンチに2人の左腕投手が居ましたが、ここまで投手を揃えるのは公立高校では、非常に困難です。

 

今年の103回夏の甲子園大会の出場校を見ても、約75%は私学の高校です。

 

私学の強豪校となると、全国から甲子園を目指す球児が集いますから、球数制限が導入されても、それほどの影響はないでしょう。

 

一方で、公立高校の甲子園出場は一層、厳しくなると言わざるを得ません。

 

公立高校は、余程の古豪でもない限りは部員数は1学年10名程度です。

 

3学年併せても30人台の高校が最も多いのです。

 

年々減り続けている野球人口の中で、公立高校が少なくとも3人以上の実力ある投手を育てていくのは非常に困難です。

 

甲子園だけが人生ではない

 

…とは言われますが、多くの球児は甲子園出場の為に、日夜、激しい練習に歯を食いしばり頑張っています。

 

今大会では、公立高校の中では、高松商、長崎商が印象に残りましたが、この2つの高校は県内では、名門と言われる高校であり、野球部員も比較的、多く集まります。

 

今後は、公立高校の中でも、球数制限の導入によって差別化が明確に、進んでいくと予想されます。



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